ガーゼ服の ao(アオ)。
糸魚川市にある昭和42年創業の縫製工場 美装いがらしのファクトリーブランドです。
「ファッション」に縁遠い私が、縁あって、ao の工場見学へ行ってきました。
お裁縫がてんでダメな私には、まぶしいくらいの工場で働く人々。
五十嵐専務が語ってくれた、ao ブランドのストーリー。
軽い気持ちで、工場見学へ行ってしまった私。
「ホントすみません」という申し訳なさと、「貴重な経験をありがとうございます!」という思いで、帰ってきました。
大人になって初めての工場見学のレポートです。
ao の誕生
平成17年(2005年)4月に、「ao 代官山」がオープンしました。
ブランドの企画が始まったのは、その前年の7月と聞いて、「え?そんなに短い間で立ち上げられるもんなんですか?」と驚きました。
いや、勿論、大変だったそうです。
当時、繊維や縫製の生産はアジアへ流れ、国内の繊維産業は厳しい状況でした。
美装いがらしでも、それまで約10年、販売店への企画提案など試行錯誤を重ねていたそうです。
その中で、「自社で価格を決められ、着る人に直接伝えられる方法でなければならない」と強く感じるようになったとのこと。
平成16年6月に、経済産業省の助成事業の採択を受けたことが、後押しとなりました。
7月から企画が本格的に動き出し、雑誌編集者だった久保正子さんをディレクターとして迎えたのは12月。
「一年間は、商品は売れなくとも、ブランディングに力を入れよう」と、臨んだそうです。
一年を待たずに、ao の“洗いざらしのよさを感じる服” “繰り返し着続けたい服”は支持を得ました。
なぜ、ガーゼ?
「綿」という素材を切り口にすることは、決めていたそうです。
そして、縫製工場としての強みを活かせる、他に無い(少ない)「ガーゼ」に。
でも、縮率タテヨコ20%で、引っ掛かりやすい生地は、洋服には難しい素材。
仕入れた生地のロット毎に、調整しながら生産することが必要だといいます。
最初の頃は、300枚作ってその6,7割がB品ということもあったというお話でした。
縫製工場見学
いよいよ、ao の服が生産される現場へ。
これが、ガーゼ生地。
織機から織り上がったばかりの生機(きばた)という状態で、工場に入ります。
綿糸本来の風合いや肌触りを残したままに、着心地のよい服となります。
肌触り・着心地を第一とする ao の場合、染めは縫製の後なんだそうです。
染色の順番で、肌触りに差があるなんて、知らなかったです。
コンピュータ裁断されるガーゼ生地。
その柔らかそうな感じに、なぜか、残った方の生地が気になりました。
そして、ミシンが並び、リズムよくミシンの音がするフロア。
か…かっこいい!
ao 以外の製品も多く生産されていて、たーくさんのシャツ・ブラウスが見えました。
ミナ ペルホネンのブラウス、有名ブランドのシャツ、某店のユニフォームなども。
業務用のミシンや形態安定加工の装置など、見たことの無いものばかりで興奮しました。
ao のギフトBOX
つむぎ日和の会場で惹かれた、ao のギフトBOXと、折形を採用した贈り物のかたち。
今回、なんと、そのギフトBOXをお土産に頂いてしまいました!
中には、マフラーと2010年グッドデザイン賞受賞のフェイスタオル。
中身も嬉しいですが、箱がまた嬉しい!
引き出しタイプの箱自体もいいし、収納ボックスとしてそのまま使えるのがいいです。
色や段ボールの質感、ロゴ部分の凹み。
ニマニマ笑ってしまいます。
伝える力
作ることを1としたら、伝えることには5の割合で力を注いでいる、とお聞きしました。
縫製工場として、品質と技術に自信があるからこその「作る」の割合が1なのかとも思いますが、それぐらい「伝える」ことは難しいんだと感じました。
「工場なのだから、良いものを作るのには自信があった」そうです。
- その良さを、分かってくれる人に、どう伝えるか?
- それは、お客様が求めているものなのか?
- 作り手のエゴや想像で、作っていないか?
と、いつも考えるそうです。
展示会などで販売店やお客様と会って話すこと、
海外の展示会でバイヤーの意見を聞くこと、
他社とコラボレーションすること、
クレームを寄せるお客様も、新しい気付きを貰えるチャンスと捉えているそうです。
紙好き視点でいえば、ao は“洗いざらしのよさ” “肌触りのよさ”を印刷物で伝えることにも丁寧だなと感じます。
この質感のよいカタログ・パンフレットは、つむぎ日和の時にも、いそいそと貰ってきました。
丁寧な言葉や柔らかい雰囲気の写真に見入ってしまいます。
ao のガーゼが買える店
ユニクロ率が高い私が持っている ao 製品は、ハラマキ・ハンカチ・ストール。
ガーゼ服までは遠いのですが、使っていて優しい気持ちになれる肌触りが好きです。
これらを買ったのは、十日町の小さな服屋(というかワンダーランド)Omakeさん。
Omake店長に、ガーゼの良さを教えて貰いました。
彼女がいなかったら、私にとって ao はもっと遠い存在だったかもしれません。
そう、ao は、代官山の店舗以外でも買えるのです。
新潟県内では、新潟三越・tetote(新潟市秋葉区)・Omake(長岡市・十日町市)で取り扱いがあります。
取扱店は、全国に50店と、広がっているそうです。
4月21日(土)22日(日)には、地元 糸魚川でのファクトリーイベントが開催されます。
「ao ファクトリーイベント vol.3 手から手にわたる やさしいガーゼ展」。
フライヤーが届きましたので、後日アップします。
縁
お話を伺っているなかで、「縁(えん)」という言葉が印象に残りました。
ao 立ち上げの後押しとなった助成事業を教えてくれたのは、取引先の方だったそうです。
ディレクターの久保さんと五十嵐専務は、大学時代からの旧知の縁、
協働するデザイナー・パターンナーとの縁(コラボ)、
長く深く付き合える販売店との縁。
通販生活をはじめ、他社とのコラボも展開されています。
hal、ギャルリ百草とのコラボが進んでいるそうです。
一つ一つの縁を大切にしながら、長く愛され続ける商品を作っていこうという想いを感じました。
そして、その想いを形にしているのは、糸魚川の工場の技術。
私の工場見学も、「これもご縁」と受け入れて下さいました。
ありがとうございます。
コメント
コメント一覧 (4件)
素晴らしいリポート!楽しく読ませていただきました。
工場見学って言葉だけでもわくわくしますよね。
あらゆる分野で物を知らない私がお邪魔してたら、
たぶんきっと口が開きっぱなしでカラッカラになってと思います。
「もの作り」って言葉を今あちこちでよく聞きますが、
どれも簡単ではない(当たり前のことですが)、
皆さんの強い結束と信念があってこその取り組みなんだなあと感じました。
長くなってすみません(汗)。
ヒヨコさん、
いやー、軽い気持ちで行ったもんですから、思いもかけず色々お話聞けて、「あぁ、ヒヨコさんが居てくれたら…」と思っていました。
文章書いてる時も、「あぁ、ヒヨコさんなら、もっと専務さんの言葉を文章に表せただろうに…」と。
そんなヒヨコさんに楽しんでいただけて、嬉しいです。
緊張してて、工場へ移動した際には、ノートは持ったけどペン持たず…の状態でした(–;
「エフスタイル」さんの名前も出たりして、なるほど繋がりがちゃんとあるんだなぁなんて、一人納得したりしてました。
素敵なブランドが新潟発って云うのが、単純に嬉しいっす!
そして、作ってる現場が見れて、嬉しかったです。
また、工場見学してみたいなぁと思いました。
誰か、呼んでくれませんかね〜。
本格的工場見学でビックリ!惜しいことをしたわい。
見事なリポート、雑誌の特集記事でも読んでる気分だ。
いつも思うけど、ジローさんのアンテナは面白い物をキャッチして
おまけに文章はもっと知りたいと思わせる興味づけがうまい。
やっぱ雑誌とかつくっちゃう方向じゃない?
Tomokoさんを置いて、一人で行っちゃったけど、いい思いさせて頂きました。
2時間半もお邪魔してた割には、かなり端折ったレポートになってます。
> 文章はもっと知りたいと思わせる興味づけがうまい。
なるべく感じたままを伝えたいと思うだけで、特に意図はしてないんですけどね。
そういって頂くと、嬉しいです。
五十嵐専務のお話、Tomokoさんが聞けば、また違った方向に響いて面白かっただろうなぁと思いました。
機会があれば、是非お話してみてください。